[ご挨拶]
室町時代末期の頃、唐物の茶道具にまじり、和物の道具が取り上げられる時代の節目に美濃大窯の工人により作り出された白いやきもの(白天目)と黒いやきもの(鉄釉)。この桃山陶以前の室町陶とでも呼ぶべき技を現代につなげたく試行錯誤を繰り返している毎日です。
今回は白と黒をテーマに、室町茶陶を展示いたします。是非ともご高覧いただければ幸せです。
青山双溪
【「白と黒」によせて】
佐藤 豊三(徳川美術館 参与)
もう二五年以上前になるが、ある日、青山双溪さんが突然に私の勤務先であった徳川美術館を訪れた。その時、彼は館蔵の重要文化財で、侘びの茶の湯の開祖とも言うべき武野紹鷗所持、大名物「白天目」の再現を目指していた。白天目の釉薬について、当時は灰釉説と長石釉説が拮抗していたが、彼はそれまで瀬戸・美濃で出土した「山茶碗」の研究をしており、断固灰釉説であるとあつく主張していたのを覚えている。
彼が白天目独特の形・土あじ・釉薬の研究・研鑽を重ねている中で、僥倖が舞い込んできた。それが一九九四年に多治見市小名田古窯址出土の白天目らしい陶片の出土である。この陶片によって透明な灰釉と陶土との相互作用で白く発色する自説に自信を深め、試行錯誤を繰り返した。二〇一二年に萌葱かかった透明釉で、見込みの釉溜のビロード、独特の貫入と釉内にあらわれた気泡・黒点、さらに土味が大名物の「白天目」の特徴とほぼ一致する「倣製白天目」を完成させた。翌二〇一三年に京都の野村美術館で完成披露展示会が催され、茶の湯の本場・京都で灰釉による「白天目」が驚愕のもとに認められ、白天目の灰釉・長石釉の論争に終止符が打たれた。二〇一八年には青山さんは「白天目」の多治見市無形文化財技術保持者として認定された。
今回、「白と黒」という、美濃焼の二大釉薬である灰釉と鉄釉による展示会とのこと。白天目釉ばかりでなく、彼が創出した様々な白釉や伝統的黒釉の新しい解釈による作品を拝見するのを楽しみにしている。
【初釜呈茶会】
1月11日(土) 11:00〜16:00(約20分)
[席主] 原田政孝(式正織部流茶道家)
[料金] 一席500円(税込)
【トークイベント】
1月11日(土) 15:00-15:45
[出演] 佐藤豊三様(徳川美術館参与)
青山双溪(陶芸家)
長江惣吉(陶芸家)
[定員] 20名
[料金]前売1,000円(呈茶会込)
当日1,000円(税込)
武野紹鷗が所持をした白天目三碗(学説によっては四碗)。これらの茶の湯の大名物の歴史的背景と共に白天目について語ります。
草の頭窯 青山双溪(青山双男)
昭和四一年 父 青山禮三と共に「草の頭窯」を開窯する
昭和五五年 伊勢丹新宿店にて草の頭窯父子展(以後継続)
平成一〇年 第二五回美濃陶芸展にて中奨励賞(黄瀬戸)
平成一二年 第二七回美濃陶芸展にて美濃陶芸大賞(白陶)
平成一三年 美濃陶芸作品永年保存事業の作品に選定される(白陶)
「小名田窯下窯出土白天目碗の土と釉薬について」
『多治見市文化財保護センター研究集会』で発表
平成一四年 『尾張青瓷研究集会』同右演目で講演
平成一五年 美濃陶芸協会理事後 副会長に就任(平成二三年退任)
平成一六年 第二二回幸兵衛賞を受賞 「山茶碗の成形技法について」
『瑞浪陶磁資料館研究紀要第一〇号』
平成一八年 「美濃窯における施釉陶器の皿にみられる成形技法について」
『瑞浪陶磁資料館研究紀要第一一号』
平成一九年 九州国立博物館文化庁海外展「日本のやきもの」で、
「美濃における紐輪積みロクロ成形について」講演
平成二〇年 「桃山陶にみられる紐輪積み成形技法について」
『瑞浪陶磁資料館研究紀要第一二号』
平成二二年 岐阜県伝統文化継承功績顕彰
「出土した白天目茶碗の器形・胎土・釉薬について」
『瑞浪市陶磁資料館研究紀要第一三号』
平成二四年 「伯庵茶碗の成形技法について」
『瑞浪市陶磁資料館研究紀要第一四号』
「武野紹鷗所持白天目の再現」
『茶の湯文化学会東海ブロック例会』発表
名古屋工業大学先進セラミックス研究センターにて
「白天目の再現について」講演
平成二五年 東京銀座『おかりや』にて双男(双溪)作陶展
青山双男を改名し双溪を名乗る
京都東山野村美術館にて「双溪茶陶展」
伊勢丹 新宿店にて「草の頭窯父子三代展」
平成二六年 岐阜高島屋にて「双溪作陶展」
多治見美濃焼ミュージアムにて企画展 白天目灰釉古陶の再現(作品展)
平成二七年 岐阜県芸術文化顕彰を受賞
荒川豊蔵資料館において「牟田洞古窯跡出土瀬戸黒の検証と再現」
平成二八年 国立大学法人名古屋工業大学大五四回セラミック基礎科学討論会での
「瀬戸黒釉中の鉄の分析」発表用技術資料の提供
岐阜県に白天目茶碗を寄贈し感謝状を授与される
平成三〇年 白天目技術保持者として、多治見市無形文化財に指定される