

「居場所~原風景~」展に寄せて土屋明之 生まれ故郷・多治見のガレリア織部で個展ができることを大変うれしく思うとともに、感謝申し上げます。私は1954年3月に生まれ、大学に入学するまでの18年間をこの地で過ごしました。多治見駅周辺の風景は60年近くの歳月とともに大きく変わり、その変貌には驚かされます。 当時、自宅の目の前には笠原鉄道の起点である新多治見駅があり、線路や倉庫、工場に囲まれた特異な場所でした。日々、貨車を連ねたディーゼル機関車が行き交い、荷の積み下ろしが行われる光景が日常でした。 やがて倉庫の屋根に登ることを覚え、そこは私の居場所となりました。黒く波打つ瓦の上から、流れる雲や風の匂い、山に沈む夕日、そして駅から溢れる人々の動きを眺める時間は、非日常の中で空想に遊ぶかけがえのないひとときでした。 年を重ねるにつれ、あの頃の風景は心の原風景として残り続けています。本展では、その記憶をもとに、蜜蝋や革を素材とした家や倉庫、教会などを石の上に佇むノスタルジックで幻想的な風景として表現しました。 「行く川の流れは絶えずして…」という『方丈記』の一節のように、すべては移ろい続けます。それでも心に残る何かを大切にしながら、これからも『美の何か』を求めていきたいと思います。 ご来場の皆様には、非日常な造形表現された風景と対話することを楽しんでいただければ幸いです。 【プロフィール】土屋明之 Tsuchiya Akiyuki 1954年岐阜県多治見市生まれ。岐阜大学教育学部美術工芸学科卒業、同大学彫刻研究生修了。岐阜県立特別支援学校教員・校長を歴任後、中部学院大学短期大学部特任教授を務める。近年は、岐阜県芸術文化会議会長、岐阜県障がい者芸術文化支援センター[TASCぎふ]センター長として障がい者芸術文化の普及・支援に尽力するとともに、「清流の国ぎふ芸術祭Art Award IN THE CUBE 2023」実行委員会会長、「ねんりんピック岐阜2025」美術展運営委員会運営委員長などを務め、地域文化の振興において中心的役割を担っている。1980年代より彫刻およびインスタレーションの制作を開始。「原風景」を主題に、記憶や時間の堆積を喚起する造形表現を展開してきた。 略歴1954 岐阜県多治見市に生まれる1977 岐阜大学教育学部美術工芸学科卒業1980 同大学彫刻研究生修了岐阜県立特別支援学校教員として勤務2014 中部学院大学短期大学部特任教授として勤務(~2019年)2018 岐阜県障がい者芸術文化支援センター[TASCぎふ]センター長(~2025年) 主な個展1993 原風景展(ギャラリーキャプション)2001 こころの片隅・断片(ギャラリー欅)2006 太古の原風景(アクティブG)2019 月へのオマージュ(ギャラリー満喜田)2020 原風景(ギャラリーいまじん)2023 土屋明之展(極小美術館)2025 家~居場所~(ギャラリーいまじん)2026 居場所~原風景~(ガレリア織部) 主な受賞1987 朝日現代クラフト展奨励賞1992 芸術祭展「京を創る」大賞2004 岐阜県芸術文化奨励賞2024 岐阜県障害のある人も共に生きる清流の国づくり表彰 ※最終日の7月9日(木)は15時までとなります。
